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福岡高等裁判所 昭和49年(ネ)246号 判決 1975年3月27日

主文

原判決中、控訴人(付帯被控訴人)等と被控訴人(付帯控訴人)有限会社築上交通、同谷口東市、被控訴人織田清孝、同井無田幹彦に関する控訴人(付帯被控訴人)等敗訴部分を次のとおり変更する。

被控訴人(付帯控訴人)有限会社築上交通、同谷口東市、被控訴人織田清孝、同井無田幹彦は、各自、控訴人(付帯被控訴人)等に対し、それぞれ金二二万七、九一一円及びこれに対する昭和四六年七月三一日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

控訴人(付帯被控訴人)等のその余の請求を棄却する。

被控訴人(付帯控訴人)有限会社築上交通、同谷口東市の付帯控訴を棄却する。

前項の付帯控訴費用は被控訴人(付帯控訴人)有限会社築上交通、同谷口東市の負担とし、控訴人(付帯被控訴人)等と被控訴人(付帯控訴人)有限会社築上交通、同谷口東市、被控訴人織田清孝、同井無田幹彦間のその余の訴訟費用は第一、二審を通じてこれを三分し、その二を控訴人(付帯被控訴人)等の負担、その一を被控訴人(付帯控訴人)有限会社築上交通、同谷口東市、被控訴人織田清孝、同井無田幹彦の負担とする。

事実

控訴人(付帯被控訴人、以下単に控訴人と称する。)等は、「控訴人等と被控訴人(以下付帯控訴の有無にかかわらず単に被控訴人と称する。)等に関する原判決中、控訴人等敗訴部分を取り消す。被控訴人等は、各自、控訴人等に対し、それぞれ金三七七万四、八八四円及びこれに対する昭和四六年七月三一日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審共被控訴人等の負担とする。」旨の判決、被控訴人有限会社築上交通、同谷口東市の付帯控訴につき付帯控訴棄却の判決を求め、被控訴人有限会社築上交通、同谷口東市、同織田清孝訴訟代理人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人等の負担とする。」旨の判決、被控訴人有限会社築上交通、同谷口東市の付帯控訴として、「原判決中、同被控訴人等の敗訴部分に付された仮執行宣言を取り消す。付帯控訴費用は控訴人等の負担とする。」との判決、のちに付帯控訴の趣旨を拡張し、「原判決中同被控訴人等敗訴部分を取り消す。控訴人等の請求を棄却する。」との判決を求め、被控訴人井無田幹彦は、適式な呼出をうけながら当審口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しない。

当事者双方の事実上の主張並びに証拠関係は、控訴人等において、訴外亡宮崎智子の逸失利益につき、「昭和四六年度の賃金センサスによる高卒女子全産業年齢帯別賃金は別表記載のとおりであり、亡智子も若し本件事故に遭遇しなければ、最低同表記載の収入を得た筈であるから、その就労可能期間内の別表期間中総計を合計すれば、総額三、四二四万〇、八〇〇円になるところ、生活費を五〇パーセントとして、逸失利益の総額は一、七一二万〇、四〇〇円であり、控訴人等は右損害賠償請求権の二分の一ずつを相続取得した。」旨主張を改め、立証として、新たに〔証拠略〕を提出し、被控訴人有限会社築上交通、同谷口東市、同織田清孝訴訟代理人において、「右控訴人等の逸失利益の主張は、亡智子が高等学校以上の教育をうける保証がないのに、高卒女子の収入を基礎にしている点、及び中間利息の控除がなされていない等の点で不当である。」、被控訴人有限会社築上交通、同谷口東市の付帯控訴につき、「控訴人等は、被控訴人等に対する仮執行宣言付原判決を債務名義として、被控訴人有限会社築上交通、同谷口東市の両名に対し、(イ)、福岡地方裁判所行橋支部昭和四九年執(イ)第四六号動産差押、(ロ)、同裁判所昭和四九年(ヌ)第二号不動産強制競売開始決定、(ハ)、同裁判所昭和四九年(ル)第七五号債権差押命令、(ニ)、同裁判所昭和四九年(ヌ)第四号自動車強制競売手続開始決定の各強制執行をなしたが、右債務名義に対しては、債務者の一人である被控訴人織田清孝が昭和四九年四月二二日と同年五月三一日の二回に亘り、控訴人等の原審訴訟代理人弁護士坂元洋太郎を通じ、債務名義の元利を越える四一二万一、〇六八円を支払い、債務を完済した。」旨述べ、立証として、新たに〔証拠略〕を援用し、当審提出の〔証拠略〕の成立はいずれも不知、と述べたことを付加するほか、原判決の事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

理由

当裁判所は、控訴人等の被控訴人等四名に対する本訴請求を、各自金一九七万九、八三七円及びこれに対する昭和四六年七月三一日以降完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余を棄却すべきものと判断するが、その理由は、原判決一四枚目表五行目「次の」以降一三行目((ニ)、養育料控除の前行目)までを、「三八三万六、四三〇円{318,900×(18.4934〔53年の係数、63-10=53〕-6.4632〔8年の係数18-10=8〕)=3,836,430}であり、弁論の全趣旨によれば、控訴人等は亡智子の死亡により同女の両親として右同女の逸失利益賠償請求権の二分の一宛を相続取得したことになる。」、同一四枚目裏一一行目以降一五枚目表七行((三)、墓地、墓石費用の前行)までを、「そして、右養育費は、智子が稼働を始める満一八歳に達する八年間を通じ、一ケ月平均一万円とみるのが相当であり、年額一二万円の右八年間分をライプニツツ方式により年五分の中間利息を控除し事故当時の現価に引き直せば、七七万五、五八四円(120,000×6.4632〔8年の係数=775,584)であるから、控訴人等の亡智子の逸失利益関係相続分は、差引き一五三万〇、四二三円ずつ(3,836,430×1/2-775,584×1/2=1,530,423)となる。」、同一七枚目表三行目から四行目にかけて「従つて右は贈与であり、本件事故による損害の賠償として支払つたものとはいえず、」とある部分を、「従つて、右は葬儀費用に関する贈与であり、本訴請求の損害賠償として支払われたものとはいえず、」、同一七枚目表六行目以降を、「九、以上みてくると、控訴人等は、各自、被控訴人等四名に対し、それぞれ、亡智子の逸失利益相続分の関係一五三万〇、四二三円、墓地、墓石費用一九万円、慰藉料二五〇万円、計四二二万〇、四二三円から自賠責保険金二四四万〇、五八六円を差引き、弁護士費用二〇万円を加えた、一九七万九、八三七円及びこれに対する本件事故発生の翌日である昭和四六年七月三一日以降完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求め得ることとなり、控訴人等の本訴請求は右の限度で正当というべく、その余は失当として排斥を免れない。」と改め、弁論の全趣旨により成立を認める当審提出の甲号各証並びに当審における被控訴人谷口東市本人尋問の結果も原判決の認定判断を左右するに足りないことを付加するほか、原判決の理由記載と同一であるから、ここにこれを引用する。

なお、被控訴人有限会社築上交通、同谷口東市は、本件につき被控訴人織田清孝が原判決認容額を上廻る四一二万一、〇六八円を弁済した旨主張するところ、当裁判所昭和四九年(ウ)第一五〇号強制執行取消申請事件記録によれば、右支払は、控訴人等が仮執行宣言付原判決を債務名義として被控訴人有限会社築上交通、同谷口東市に対し、同被控訴人等主張の各強制執行に着手後、不真正連帯債務者で債務名義名宛人の一人である被控訴人織田清孝から、原判決認容金額と執行手続費用等を含め控訴人等原審訴訟代理人宛なされたものであることが認められ、被控訴人等相互の関係、弁論の全趣旨を併せ考えると、右各執行の続行を阻止するためのものであり、結局、原判決の仮執行に基づくものと解することができ、そうすると、右弁済の事実は、本案請求当否の判断に当り斟酌し得ないといわざるを得ない。

よつて、控訴人等の控訴に基づき、原判決認容額を越える控訴人等各自につき金二二万七、九一一円及びこれに対する遅延損害金請求部分を更に認容すべく、控訴人等と被控訴人等に関する原判決中控訴人等敗訴部分を主文第二、三項の如く変更し、被控訴人有限会社築上交通、同谷口東市の付帯控訴は理由がないのでこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第九六条、第八九条、第九二条、第九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 亀川清 美山和義 田中貞和)

別紙 <省略>

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